入れ歯は歯を補うだけの装置と思われがちです。しかし、ただ噛めれば良いのではなく、グラグラと動揺しないことや顔の動きの中で違和感が無いこと、噛み合わせと発音が適切であることなど、多くの事項が求められます。
粘膜の上に乗る床の部分が金属製となる金属床は薄さと軽さから、お口に快適さをもたらします。薄くても強度が保てるのが、金属床のメリットです。その中でもチタン床は特に優れた素材でできており、食事や会話の際に保険適用の入れ歯よりも違和感が少ないでしょう。
チタンとは
チタンは鉄よりも軽く、アルミよりも重い金属で、非磁性です。チタン合金は軽量な割りに引っ張り強さが高く、かなりの比強度を持っています。塩素イオンに対しての耐食性が高い(溶けにくい)一方で、酸素と反応しやすい特性を持っています。
チタンは削った瞬間に酸素と反応し、酸化皮膜という強固な膜をつくります。この膜があるお陰で、それ以上酸化が起きにくいため、チタンは錆びにくいと言われています。
チタンの溶けにくい、錆びにくい、軽い、強いといった特性は口腔内の環境を下支えする素材としてピッタリなのです。
チタン床には数本の歯を補う部分入れ歯と、上または下の顎の全ての歯を補う総入れ歯があります。チタン床のメリットには以下のようなものがあります。
- 食べ物の温度が伝わるため、食事が楽しめる
- 金属部分は汚れが付着しにくい
- 薄く細く作製できる
- 金属製なので、丈夫で壊れにくい
- 剛性があり、たわまない
- 金属アレルギーの恐れが少ない
- 力学に基づいた設計ができる
レジン床義歯とは上顎・下顎の粘膜に接する部分がプラスチックで作られた入れ歯、金属床義歯の場合は金属で作られた入れ歯のことを言います。レジン床義歯は保険適用のため治療費が比較的安価ですが、入れ歯の設計範囲に限界があります。一方、自費診療である金属床義歯では、患者様のお口の形やご希望に応じて自由な設計が可能です。ビルや橋の設計に用いられる建設力学に則り、構造設計に基づいた精密な入れ歯を設計することができます。
レジン床と金属床の違い
レジン床義歯(保険) | 金属床義歯(自費) | |
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熱伝導性 | 食べ物の温度が伝わりにくい | 食べ物の温度が伝わりやすい、食事を美味しく楽しめる |
使用感 | 分厚く違和感があり、会話がしにくい時がある | 薄く細く作れるため、快適な使用感が得られる |
耐久性 | ・割れたりひびが入ることがある ・たわみやすく歯や歯茎に悪影響を与えることがある |
・丈夫で壊れにくい ・たわみにくく残った歯や歯茎に優しい |
衛生面 | 汚れや臭いがつきやすい | 金属部分は汚れにくい、清潔に保つことが可能 |
費用 | 保険診療のため安価 | 自費診療のため高額 |
レジン床義歯と金属床義歯とでは、その快適さに大きな違いがあります。金属は強度が高く、レジン床義歯の3分の1程度の薄さで床部分を作ることが可能です。お口の中が広くなる分装着時の違和感も少なくなり、熱伝導性も良くなりますので、毎日の食事や会話も不自由なく楽しんでいただけます。また、外側からの力による変形も起こりにくく、残っている天然歯や歯茎への負担も軽減できるメリットがあります。